シュバルツバルトな毎日

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2006年 10月 14日

工具のドイツ語

機械や工具の中には、昔から使われている名前と最近使われている名前の2つを持つものがあります。最近になって新しく名前が与えられたということは、その昔からの名前が、その工具の特性、性質をよく表していないということでもあります。ですので、古い呼び名をやめて新しい、正しい呼び名を使うべきです。でも、職業訓練で育てられる徒弟は、その親方が古い呼び名で道具を呼んでいたら、その徒弟もやっぱり古い名前を使い続けるでしょう、そうやって育てられたんですから。というわけで、こういう親方徒弟的な職業では、なかなか古い言葉がなくならずに、新しい言葉と併用されることがあります。

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左が僕ですが、ある機械を使って一生懸命工作に励んでいます(笑、このときは10倍のUhrmacherlupeを付けて作業してますね。かなりクソまじめのようです)。この機械を日本語で「旋盤」といいます。被工作物を高速で回転させながら、それに刃物を当てて所要の形状を削り出すための機械です。これをドイツ語でDrehbankまたはDrehmaschineといいます。昔の呼び名がDrehbankでいまはDrehmaschineが正しい呼び方ということになっています。Bankという単語の意味は工作台とかベンチなんて辞書には書いてあります。なんというか、がっしりしていて長いものを指すのでしょう。そういう意味ですからDrehbankという言葉はどことなく「静的」な響きを持っています。旋盤は主軸を回転させるという「動き」がないと使い物にならないのに、Drehbankでは「静的」になってしまう。昔、時計製作に限らず、旋盤で仕事をする工場では、比較的大きな電気モーター(もっと昔は水車で発生する回転エネルギーだったかもしれない)が工場内に一つだけあって、それを工場にあるすべての旋盤が共有、必要に応じてベルトでその回転エネルギーを得ていたのです。各々の旋盤がそれぞれ動力源を持つには、電力供給やモーターの単価の問題があって無理だったのでしょう。だから、旋盤自体は動力がなく「静的」だったわけで、まさにBankだったのです。

しかしいまは、そこら中に電気コンセントがあって、同時に複数台の旋盤で作業をしてもブレーカーが落ちることはありませんし、電気モーター自体もそんなにお高いものでもないですから、いまの旋盤はおのおの動力、モーターを持っているのが当たり前です。(そのほうが工場内が静か。昔の旋盤工場はモーターが駆動し始めると、モーターや伝動軸の回転の騒音、ベルトの音で話が出来ないくらいうるさくなったそうです。)そうなると、Maschineという「動的」な単語の方が、今日の旋盤の特徴をより適切に表しているわけで、したがって「今はDrehbankというものはない。君達が使っているのはすべてDrehmaschineだ!」(時計科主任の話)ということになるのです。

1014追記:
H.Suto様
いままで旋盤のことをDrechselbankと呼ぶのを時計学校で聞いたことがありません。
ですのでこの単語は金属加工の場合には使わないと思います。いまは、そこまでしかお答えできません。手元にある百科辞典Der Brockhausによると、Drechselnとは、
spanendes Bearbeiten von Holz u.a. nichtmetallischen Werkstoffen zu rotationssymmetrischen Koerpern; im Gegensatz zum Drehen wird das Werkzeug in der Regel von Hand gefuehrt.
とあります。
ちなみに時計旋盤のような小さな旋盤の場合は、金属加工でも手持ちバイトをよく使います。
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by furtwangen | 2006-10-14 06:36 | マイスター学校@Schwenningen


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