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2006年 10月 29日

ドナウの水源

古い写真を持ち出して、今日はフルトワンゲンの紹介をします。
この町は僕がこの夏まで3年間住んだ町です。黒い森の奥深く、標高およそ900m、人口9700人の町で、鉄道の来ない陸の孤島。こんな小さな町にドイツ最古の時計学校があり、またドイツ最大の時計博物館があります。そしてもうひとつフルトワンゲンにあるすごいもの。それがドナウ川の水源です。僕は3年前、この小さな町に来てからすぐにこの水源を見に行きました。フルトワンゲンの郊外およそ7km離れたところにあります。

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もちろん車などありませんから、一人でポツポツ歩いていきました。大まかな地図はあるものの、人通りもなければ案内標識もない、あるのはただただきれいな景色と牛くらい。そんなとこ一人で90分も歩いていると本当に不安です、この先本当に水源があるのかと。ドナウの源流が最初に流れ込む町がフルトワンゲンですから、町を出発してから、常にその流れを見失わなければ、水源に着くはずだという信念だけで歩いていました。

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これがドナウ川の水源です。ドナウ川はドナウエッシンゲンに水源があるのでは、とお思いの方もいるでしょう。確かにドナウ川はそこでVillingen方向から来るBrigach川と我がフルトワンゲン側からくるBreg川が合流するところから始まります。しかし、上の写真の銅版によると
An dieser Quelle beginnt die geographische Laengenmessung der Donau. Deutsche Donaulaenge 647km
この水源(つまりBreg川の水源)からドナウ川の地理学的な長さが測られる、とありますからドナウの水源はここフルトワンゲンにあると言っていいでしょう(笑)。(Brigach川よりもBreg川の方が5kmほど長いので、こういうことになります)

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ドナウ源流の最初の最初の流れ。この横にもう一つ銅版があります。

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Donau-Quelle
Hier entspringt der Hauptquellfluss der Donau, die Breg, in der Hoehe von 1078m ue.d.M.,2888km von der Donaumuendung entfernt, 100m von der Wasserscheide zwischen Donau und Rhein, zwischen Schwarzem Meer und Nordsee.
ドナウの泉
海抜1078m、ドナウの河口(つまり黒海)から2888km。ここにドナウの主源流、Breg川湧き出す。ここから100mのところにドナウ川とライン川、(つまり)黒海と北海への分水嶺がある。

うん、これだけはっきり書いてくれれば、わざわざ90分もえっちらおっちら歩いてきた甲斐があるというもの。ちなみに、この分水嶺の記述についてはよく分からないけど、地図をみるとこの水源から300mくらい離れたところにGriesbachという川の水源があって、この川は最終的にライン川に流れ込む。だから、この2つの泉の地下水源は同じだと言いたいのだろうと思います。

ちなみにドナウの水源については、この水源のすぐ近くにあるレストランのパンフレットにこんなことが書いてある。
Das Universallexikon des Grossherzogtums Baden stellte diesbezueglich bereits 1847 fest:
"Donau, der groesste Fluss Deutschlands, entspringt bei der Martinskapelle in einer wilden und einsamen Gegend des Schwarzwaldes, heisst am Anfang Brege... und bildet erst in Donaueschingen, wo sie sich mit der Brigach vereinigt, die Donau"
このことに関してバーデン大公国の百科事典はすでに1847年にこう確定している。
「ドイツ最大の川ドナウは未開で人気のない黒い森のなかにあるMartin教会(今もある)の傍に湧き起こる。すなわちBreg川に始まり、Brigach川と合流するドナウエッシンゲンで始めてドナウとなる」と。

1029追記:
Manekneko様
最近は一般の方にはあまり面白くない工具の話が続いたので、Maneknekoさんからコメント頂いて、ちょっとホッとしています(笑)。お久しぶりです。

Donaueschingenの泉
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ドナウエッシンゲンの方が泉としての演出がうまいですね。駅からも歩いて数分で立地条件もいい。フルトワンゲンの泉も良かったですが、もう一度行きたいかと言われれば、歩いてはもう結構って感じです(笑)。帰りもてくてく歩きました。後で、住んでいたJugendwohnheimの寮長さんで 豚を丸一匹食べたのかと思いたくなるようなお腹パンパンの神父さんにそのことを話したら、フーフー言いながら、「歩いて? 信じられない!」といって驚いていました。
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by furtwangen | 2006-10-29 20:28 | 時計学校@Furtwangen
2006年 10月 28日

工具のドイツ語3

さて、明日から一週間の秋休みが始まります。図面を描いたりやることたくさんでありますので、気を緩めず着実にこなしていかないといけません。でも、今晩は気分転換に、このブログにちょっと多めに時間を割きます。

工具のドイツ語の3回目。
今日は長さの測定器、ノギスを取り上げます。

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これが、典型的なノギスです。普通10cmくらいまでの長さのものをふたつのクチバシに挟んで5/100mmや2/100mmの正確さで計るための測定器です。これをドイツ語で、SchieblehreとかMessschieberと呼びますが、今は後者が正しい呼び方とされています。では、なぜ前者のSchieblehreという呼び方は適切ではないのでしょう。それはLehreという言葉に原因があります。ノギスは対象物の長さを計測するために一つのクチバシが「動き」ますが、Lehreと呼ばれるものは一般的には動く部分を持っていません。ではLehreと呼ばれる測定器にはどんなものがあるでしょう。たとえば、一番身近にあるものとしては直角定規がありますね。

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直角定規Winkel。文房具屋で見ると、直角定規には目盛りがついているものだ、と思わされてしまいますが、直角定規についている長さや角度の目盛りは、付帯的なサービスであって、なくてもいいのです。直角定規にとって一番大事なことは、一つの角度が正確に「直角」であることです。自分のある角度がほかの誰にも負けないくらい正確な「直角」があること。したがって、どこにも動く部分がありません。

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これは、Lineal日本語に直せば定規。でもさっきと同じで目盛りなしです。ですので長さは測れませんが、こいつの取り得は自分の体の一部にめちゃくちゃ真っ直ぐな辺を持っているということです。これをあてがう事で対象物のある平面が平らか否かを知ることが出来ます。そんな訳でこの測定器も動く部分がありません。

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これはブロックゲージ(そう、ゲージという言葉こそLehreの訳語として相応しい)ドイツ語でEndmass。こいつはただの直方体で、木偶の坊のようですが、こいつの図体の幅が物凄く正確なのです。例えば10と書いてあるブロックゲージは幅がきっかり10mmなのです。どのくらいきっかりかというと、その幅は9.9994以上10.0006mm以下で作られています(ドイツ工業規格の最高品質00の場合)。これを使えば例えば、ノギスの検査ができます。そして、写真を見ていただければ分かりますが、動くところはぜんぜんありません。

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これはGranzlehrdornと言うらしいです。日本語では限界ゲージというかなぁ?「穴」の大きさを検査するものです。このゲージも動くところがありません。

というわけで、Lehreと呼ばれる測定器の特徴は(例外はあるかもしれませんが)
1.動く部分がない。
2.目盛りや指針を必要としない。
ということです。ですので、ノギスという測定器にLehreという言葉を使うのは本当は不適切なのです。

さて、ノギスにまつわるもう一つの話。
そもそもノギスという言葉は、人の名前に由来してます。Pedro Nunesというポルトガル人に由来するそうで、そのラテン名Noniusが訛ったと広辞苑には書いてあります。ところで、ドイツ語でNoniusとは何を指すでしょう。それはノギスの副尺を意味します。

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中央にある尺が本尺、その下に小さく書かれた目盛りが副尺、これをドイツ語でNoniusといいます。詳しくは書きませんが、ノギスで長さを正確に測れる秘密は、この副尺の目盛りが本尺の目盛りと僅かに違って刻まれているところにあります。こちらの百科辞書Der Brockhausによると、このすばらしい(デジタル技術を使わずに2/100mmの精度で長さを計測できるなんて本当にすごい!)仕組みを発明した人はNoniusさんではなく、Pierre Vernierさんという方で、Noniusさんの死後1631年に発明したそうです。そして、機械の好きな人はここでハッと思うのです。日本語で副尺のことをバーニヤ(Vernier)目盛りと呼ぶことがあるということを。

1028追記:
H.Suto様
上の記事を書いていて確かに思いました。どうやって副尺の目盛りを書いたのだろうと。
子供の頃、家にあった竹の定規にも確か検定印がありました。竹の定規に使われる10cmおき(だったか)の丸っぽい印は、子供ながらに面白い印だなぁと思ったの覚えています。

1029追記:
H.Suto様
本尺9mmを10等分する副尺(副尺一目盛り0.90mm)で測定精度が10/100mm
本尺19mmを20等分する副尺(副尺一目盛り0.95mm)で測定精度が5/100mm
本尺49mmを50等分する副尺(副尺一目盛り0.98mm)で測定精度が2/100mm
人の手で出来るのは0.9mm目盛りが限界でしょうね。
学校には測定精度2/100mmの副尺を持ったトースカンHoehenanreissgeraetがあります。
ちなみに僕がいつも使っているノギスは、精度2/100mmでは細かい仕事が出来ないので、(バーニヤさんには申し訳ないですが)副尺でなく、ラック(平板歯)とピニオン(小歯車)の機構を使ったものを使っています。

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これを使えば1/100mm単位で長さを測れます。ドイツ語でUhrmessschieberといいます。
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by furtwangen | 2006-10-28 08:34 | マイスター学校@Schwenningen
2006年 10月 27日

職訓の避難訓練

今週一番初めに、今週のいつか防災訓練があると言われました。Feueralarm火災報知器がなったら、
1.窓を閉めて 
2.電気を切る。
3.すぐに外に出る 
4.避難場所は学校の横にある芝の広場で、校舎の中を通ると近道だけど、そこは通らないで、外をぐるっと回って行く。
そして今朝、先生が早々に、「今日、警報が鳴るから」と教えてくれました。
鳴るのが分かっていても、いざ鳴ると物凄い劈くような音で、どうしても一瞬驚いてしまいます。でもその後は、ちょっと気分転換に、ってな感じで、みんな笑顔でぞろぞろ避難し始めます。

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いやー、すがすがしい、今日は訓練日和。空は明るいし、芝も絨毯みたいにふわふわ。赤い作業服は、確か電気工の生徒さん。(作業服が「赤」というのはよく分からない。作業中に大怪我して大量出血しても、目立たないから躊躇なく作業を続けられるというメリットがある?)ほかに青い作業服があって(右にひとり写ってますね)、それは精密技術科の生徒さん。僕たち時計科は白衣です。避難の際にデジカメ持参したのは僕だけでした(笑)
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by furtwangen | 2006-10-27 05:40 | マイスター学校@Schwenningen
2006年 10月 26日

一歩前進

今日は午前中、工場で作業。先生に僕のマイスター作品の構想図を見せた。うっかりしていて、これから手直ししなきゃいけない箇所が2つほどあるけれど、大筋OK。先生は時計の専門家だけあって、やっぱすごい、図面からちゃんと不具合を指摘してきた。来週一週間秋休みなので、その間にCADを使ってその構想を具体化していく。

いま、Villingenの外人局で、新規の滞在ビザをもらってきた。今回は簡単に取得できた。去年は、(一昨年までなかった)銀行口座のSperrvermerkのことや、外人局の担当のババーが典型的小役人だったせいでビザの更新に3ヶ月近くもかかった。だから今年はちょっと拍子抜けって感じ。

1026追記:
H.Suto様
だから、Schraubenanzieherと呼べばいいと思うんですよ。
(ただ、そう言うと緩めるときもあるじゃないか、ということになりますが)
Schraubenzieherというから、少なくとも異人の僕にはよく分からない。Zieherでは、直線運動的な動きは想像できますが、回転とか締めるという動きが僕には想像しにくいのです。

ただ、このくらい言い回しにこだわってくると、もう学問としての語学の域に入ってしまって、ねじ回しを実際に使っている現場の職工さんの意見も聞かないといけない。そういう意味では、H.Sutoさんがおっしゃるように、辞書の用例と現場の使い方は同じではないですね。

ネジを締めるタイミングを待っている徒弟さんに Zieh mal!って言えば、たぶんネジを
締め始めるんじゃないかなぁ、anとかfestがなくても。
Spannen Sie bitte die Spannzange aus!なんて言わなくても、旋盤の主軸のグリップに手を置いて、コレットチャックを緩めるのを手伝ってくれる友達に、ただ単純に aus!って言えば緩めてくれますし。そういう現場の雰囲気からすれば、Schraubenzieherで分からないヤツは、もう駄目ってことかもしれませんね(笑)
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by furtwangen | 2006-10-26 08:05 | マイスター学校@Schwenningen
2006年 10月 22日

ドイツのきれいな写真

工具や工場の写真もいいけれど、少しはドイツのきれいな紅葉の写真でも載っけたらどう、という半ば不満とも受け取れる日本の両親からの感想。僕はマイスター作品の具体化のため、紅葉のことなど少しも気にしておりませんでしたが、いつもお世話になっている両親に少しでも満足いただけるならと、今日はSchwenningenの紅葉を掲載いたします。

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マイスター学校の建物
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住んでいるところの庭
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by furtwangen | 2006-10-22 23:56 | マイスター学校@Schwenningen
2006年 10月 21日

3の倍数で目からウロコの日

久しぶりの更新であります。
忙しい訳ではありませんが、マイスター作品のことなど、今後の予定のことを考えると、常に神経がビンビン、24時間厳戒態勢状態で、どうもブログを書く気持ちのゆとりがありません。

さて、今日は算数の授業がありました。これは一週間のなかでもリラックスして時間を過ごせる数少ない時です。ドイツの算数は程度が低いので、授業をただまじめに拝聴しているのは時間の無駄、なにか内職しながら聞いていても十分、授業についていけます。ということで、今日も左目で内職、右耳で授業を拝聴。そうしたら、なんでも先生が「75は3で割れるかなぁ?」って言ってるじゃないですか。

「そりゃまぁ、割れるわな。いままで何度も割ってっからね」(僕のつぶやき)
「割れるよね、7と5足したら12で3の倍数だもんね」(先生)
「Was? なにそれ!」(僕の内面的動揺)
「知ってた方がいいよ。各桁の数字を足して3で割れたら、その数は3の倍数だからね。」(先生)
「マジ! 本当かよ!」(僕の内面的驚嘆)

というわけで、僕は知りませんでした、この3の倍数の話(恥)
すぐに3で割れるいろんな数を頭に浮かべてやってみると、確かに先生の言う通り。
電卓を使える環境でこの知識がどのくらい物をいうか分からないけど、数学的には面白いね。
いやー、今日はドイツに来て始めて算数の時間に感動!、脳みそが晴れ渡った日でした。
ということで、練習問題! 次の数は3で割れるでしょーか。

11112
11121
11211
12111
21111

1021追記:
H.Suto様
マイスター作品について考えなきゃいけないのですが、そういうやらなきゃいけないことというのは、大概正面から向き合いたくないもので、この3の倍数の話は、現実逃避には格好の材料となりました(笑)。というわけで、今朝は朝食を摂りながら、この問題を考えて、現実逃避しました。
証明とまではいきませんが、どうにか説明がつきそうなので、お時間がおありでしたらMoreをクリック願います。

More
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by furtwangen | 2006-10-21 06:30 | マイスター学校@Schwenningen
2006年 10月 15日

工具のドイツ語2

昨日の続き。

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これはネジ回し。ドライバーともいいますね。特にこの写真のような先の細いのを精密ドライバーといったりします。これをドイツ語ではSchraubendreherといいます。意味はまさにSchrabuen(ネジ)dreher(回し)です。このねじ回しのことを昔は、そして今でも時々、Schraubenzieherといいます。ziehenという動詞は「引く」とか「引き抜く」という意味です。だから分からないのです、なんで昔ねじ回しを、Schraubenzieherと言ったのか。こちらの人に聞いても、誰からもはっきりした答えが返ってきません。ねじ回しを使ってネジを締めたり、緩めたりするときに、「回し」たり、ねじ回しの先がネジ頭にある+や-の溝を傷つけない(なめない)ように「押し付け」たりしますが、「引」いたり(釘じゃないんだから)「引き抜く」ことは普通しないです。druecken押すという意味の単語を使って、Schraubendrueckerというなら、まだ理解できます。ですが、こんにち使われているネジやねじ回しの発想からは、どうがんばってもZieherにはならないと思うのです。だから、一つ考えられることは、昔、ネジが使われ始めた頃のネジが、いまとは、形や用途が違って、いまの人にはちょっと想像できないような何かがあったんじゃないかということです。昔の人の作業方法やその苦労というものは、工作機械や刃物の材質が非常に良質になった現代の人には、想像もつかないことがあったんじゃないかと思うのです。
まぁ、ということでいまはSchraubenzieherは間違った呼び名というふうに学校では習います。(それくらい、工場で実際に作業しているときにはよく耳にします(笑))

1015追記:
H.Suto様
ろくろ と読むんですね。すごい漢字ですね(笑)
なるほど、「締める」ですか。例文参考になります。
でも、Schraubenzieherという言葉がだんだん使われなくなると、「締める」という意味で使われる場面がまた一つ減って、段々とそのニュアンスがなくなってくるのかもしれませんね。僕の手元にある一番大きな独和辞書、小学館の大独和にも、もうその意味が載ってないです。
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by furtwangen | 2006-10-15 07:43 | マイスター学校@Schwenningen
2006年 10月 14日

工具のドイツ語

機械や工具の中には、昔から使われている名前と最近使われている名前の2つを持つものがあります。最近になって新しく名前が与えられたということは、その昔からの名前が、その工具の特性、性質をよく表していないということでもあります。ですので、古い呼び名をやめて新しい、正しい呼び名を使うべきです。でも、職業訓練で育てられる徒弟は、その親方が古い呼び名で道具を呼んでいたら、その徒弟もやっぱり古い名前を使い続けるでしょう、そうやって育てられたんですから。というわけで、こういう親方徒弟的な職業では、なかなか古い言葉がなくならずに、新しい言葉と併用されることがあります。

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左が僕ですが、ある機械を使って一生懸命工作に励んでいます(笑、このときは10倍のUhrmacherlupeを付けて作業してますね。かなりクソまじめのようです)。この機械を日本語で「旋盤」といいます。被工作物を高速で回転させながら、それに刃物を当てて所要の形状を削り出すための機械です。これをドイツ語でDrehbankまたはDrehmaschineといいます。昔の呼び名がDrehbankでいまはDrehmaschineが正しい呼び方ということになっています。Bankという単語の意味は工作台とかベンチなんて辞書には書いてあります。なんというか、がっしりしていて長いものを指すのでしょう。そういう意味ですからDrehbankという言葉はどことなく「静的」な響きを持っています。旋盤は主軸を回転させるという「動き」がないと使い物にならないのに、Drehbankでは「静的」になってしまう。昔、時計製作に限らず、旋盤で仕事をする工場では、比較的大きな電気モーター(もっと昔は水車で発生する回転エネルギーだったかもしれない)が工場内に一つだけあって、それを工場にあるすべての旋盤が共有、必要に応じてベルトでその回転エネルギーを得ていたのです。各々の旋盤がそれぞれ動力源を持つには、電力供給やモーターの単価の問題があって無理だったのでしょう。だから、旋盤自体は動力がなく「静的」だったわけで、まさにBankだったのです。

しかしいまは、そこら中に電気コンセントがあって、同時に複数台の旋盤で作業をしてもブレーカーが落ちることはありませんし、電気モーター自体もそんなにお高いものでもないですから、いまの旋盤はおのおの動力、モーターを持っているのが当たり前です。(そのほうが工場内が静か。昔の旋盤工場はモーターが駆動し始めると、モーターや伝動軸の回転の騒音、ベルトの音で話が出来ないくらいうるさくなったそうです。)そうなると、Maschineという「動的」な単語の方が、今日の旋盤の特徴をより適切に表しているわけで、したがって「今はDrehbankというものはない。君達が使っているのはすべてDrehmaschineだ!」(時計科主任の話)ということになるのです。

1014追記:
H.Suto様
いままで旋盤のことをDrechselbankと呼ぶのを時計学校で聞いたことがありません。
ですのでこの単語は金属加工の場合には使わないと思います。いまは、そこまでしかお答えできません。手元にある百科辞典Der Brockhausによると、Drechselnとは、
spanendes Bearbeiten von Holz u.a. nichtmetallischen Werkstoffen zu rotationssymmetrischen Koerpern; im Gegensatz zum Drehen wird das Werkzeug in der Regel von Hand gefuehrt.
とあります。
ちなみに時計旋盤のような小さな旋盤の場合は、金属加工でも手持ちバイトをよく使います。
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by furtwangen | 2006-10-14 06:36 | マイスター学校@Schwenningen
2006年 10月 12日

夢中になれる

今週はどうも調子がいい(笑)。なぜかというと、工場で実際に作業しているから。手を実際に動かす作業になると僕は強い。学校が始まってからの2週間、学校のことや今後の予定について口で説明、耳で理解する時間が多かった。そういう時間は体中が劣等感の塊でどうも元気が出ない。ところが実際の作業になると、ドイツ語力の占める割合が激減して、先生が作業をしているのを注意深く観る力、手先の器用さ、そういうのがグッと重みを増してくる。僕の工作能力がどれくらいかは知らないけれど、ともかく作業に夢中になれる。午後も眠くならないで、あっという間に終業時間が来る。精神的にとてもありがたいことです。

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時計旋盤で軸の削り出し。
左から棒が突き出ていて、途中から段欠きになって細くなってるでしょ。この細くなっている部分をドイツ語でZapfenといいます。このZapfenの径はca.0.5mmです。後にくる仕上げの作業を考慮すると、旋盤で仕上げる直径を最小で0.49mm最大で0.50mmにしないといけません。この0.49mmと0.50mmの差0.01mmをToleranz許容差といいます。旋盤仕事が大変か否かは、削り出す部品の小ささではなく、このToleranzの大きさにかかってきます。Toleranzが0.01mmというのは時計部品を作るときによくあることですが、非常に注意深くやらないといけませんし、このToleranzの連続だと本当に疲れてしまいます。Toleranzが0.02mmなら、まぁ、まじめに削っていれば達成できますし、0.04mmもあったら、もうその数字を見ただけで嬉しくてにっこりしてしまいます。このToleranz(ともちろん時間)との戦いが、ストレスはたまりますが、夢中になれる所以です。
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by furtwangen | 2006-10-12 07:39 | マイスター学校@Schwenningen
2006年 10月 10日

バイトの製作

この街は7月に受けた雹(テニスボール大!)の被害をまだ完全に克服できないでいます。まだまだ、そこら中でBedachung瓦の葺き替え作業をしています。

a0207111_54675.jpg今日は学校でDrehmeisselバイトとそのHalterを作りました。
Drehmeisselは径が3mmのHartmetall超硬で、Diamatscheibe(ダイヤモンド円盤回転砥石?)で刃先を整えます。
Halterは普通の鋼で、M4のネジ2本でDrehmeisselを固定するように作ります。それ以外特に洒落たことはしません。Halterを支えているのは僕の指です(笑)


これから数時間かけて、Aufzugwelle(日本語で「巻き真」というようです。僕はドイツ語がさっぱり駄目ですが、時計の部品ばかりは正直申し上げてドイツ語しかわかりません。日本語で時計の勉強をしたことがないので、時計部品の日本語名はほとんど知りません。)を時計旋盤で削り出す練習をします。僕はHSS高速度鋼のDrehmeisselを随分持っていますが、Aufzugwelleは削り出す前にhaerten焼きを入れます。ですのでHSSでは長い間切削作業ができない(すぐに刃先がstumpfになって使い物にならなくなる)ので、それより硬い超硬バイトを使います。(使った方が作業効率が100倍いい!)
今日MeisselとHalterを作ったのはそのためです。

もう朝方、学校に行く頃は気温が10度以下です。着々と冬に向かっている感じです。
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by furtwangen | 2006-10-10 05:33 | マイスター学校@Schwenningen