シュバルツバルトな毎日

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2008年 10月 31日

愚痴

今日は短く更新です。

昨日の一時のご立腹も冷めて、今日はこころ穏やかな一日でありました。
いろいろメールをいただきました。ありがとうございました。

確かに昨日はご立腹ではありましたが、それよりもこのブログで「愚痴らせていただいた」という面があります。僕の周りには日本人や日本語を理解できる人がいませんから、日本語で愚痴る機会がないのであります。ドイツ語で愚痴ればいいじゃないか、とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、僕のドイツ語はそこまで上達していません。文法的にはそれなりに愚痴れます。でも、愚痴の本質は、話の内容が理解できたか、理解してもらえたか、ではなくて、愚痴った後に気分が晴れないといけないのであります。

だから、僕は日本語で愚痴りたい。

外国で一人でいて大変なのは、病気のときと愚痴りたいとき。
僕はこの5年間、ほとんど日本語で愚痴ることなく、愚痴りたいことをすべて唾といっしょにゴクッと飲み込んで生活しています。(それだけでも大変な忍耐だと思っています、正直言って)

ですので、ときどきこのブログが僕の愚痴のはけ口になってしまいます。
会社で、みんな自分の言葉で愚痴っているのを聞いていると、ほんとうに羨ましくなります。

1101:
たくさんのコメントありがとう御座います。
みなさんのそうした励ましがあって、今日までどうにか生きていると思います。
いまは嬉し涙、ありがた涙で画面の活字が揺れて、お返事打つのが...

佐々木康平さん
メールいただき、ありがとうございました。
いまのところ至って冷静です。仕事で納得がいかないときは、まぁ、サラリーマン、サラリーマンと思って、その場は凌ぐと。

招き猫さん
いやぁ、いままで「出来すぎ」なんて言われたことないので...(笑)
日本語で愚痴れないのは残念ですが、だからといって、もう5年も日本人のいない世界にいますから、仮に職場で日本人と仕事をすることになったら、それはそれでまた、かなり気づかれするだろうな、と時々思います。

ちんころさん
僕も毎回反省してます。今回もちんころさんの話聞いてなかったなぁ、と。
ちんころさんは僕が定期的に会う唯一の日本人です。といっても年に2,3度ですけどね。いつもお会いするとき思います。前回会った日本人って誰だったかなって。大概ちんころさんなんですね(笑)

Oさん
Blogは明るい事、プラス思考のことだけ書きたいとは思っています。暗い話ばかり書いていたら、みんないなくなっちゃいそうですから。しかし、なかなかそう思うようにはいきません(笑)

1102:なおこさん
おー、それはコワイは話ですね。窓際に追いやられて、だれも理解してくれない日本語で、ボソボソ不満を言っている老人...やっぱり、日本に帰ろうかな。
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by furtwangen | 2008-10-31 07:58 | 黒い森の小さな町
2008年 10月 30日

訳の分からん会議

今日ここは初雪です。積もるほどではありませんが、町を走る車の中には、上に雪を被って走っているのもあります。ここは高度があまり高くないから、雪もまだ多くないですが、フルトワンゲンみたいに高いところにある町は、もうかなりまじめに降っていることでしょう。

今日も会議がありました、訳の分からん会議が。
今朝は、月曜の会議を受けて、「ようし、やってやろう」と、高いモチベーションで仕事を始めましたが、午前中のその会議で、やる気がゼロになりました。
昨日は7:3で社長の夢を追うと書きましたが、今は2:8くらいで現実主義のクリスティアンに賛成です。

最悪の会議、クリスチィアンも呆れていますが、僕にとってもこんな はちゃめちゃな会議は入社以来始めて。今晩の僕の気持ちは、もうどうにでもなってください、って感じ。社員に働くモチベーションを与えられない会議なんてなくていいと思うんだけど、やる気を失わせる会議って、何のためにあるんでしょう。会社は僕らを機械だと思っているのかね。肉体だけが動いて、仕事って行われているんじゃないんですよ。こんな状況は会社にとっても何の利益にもならないと思うんだが。まぁ、会社は堕ちるところまで堕ちると今日、思いました。

僕は明日もいつも通り会社に行って、ちゃんと働きます。契約ですから。だけど、もうサービス残業はしない。もうモチベーションないから。きっちり週40時間だけ働く。1分たりとも労働時間を無駄には提供しないから。その方が会社の為でしょう。その辺のことが分かっていないから、会社はいつまでもシャキっとしないんだと今日、つくづく思いました。毎日プロジェクトの方針がコロコロ変わって、会社が僕の提供する40時間の労働時間を徒労に終わらせたければそれも妙案でしょう。どうぞ、ご勝手に、僕は構わない。そういうふうに割り切らないとやっていけない。

1031:ちんころさん
気になるでしょ(笑)
会議の冒頭で「この時計の試作はやっぱ、やめます」って言ったのに、3分後には「では、やりましょう」って。「つきましては、あんた来週までに図面頼みます」って。??です。なんでデザインの検討もしてないのに、いきなり図面なんだ。それも1枚2枚じゃない、マジでやったら11枚、たった一週間で?それから、前日の会議の結果とまったく違う結論なんですけど?昨日、やらないことに決めたんでしょ?です。
つまりプロジェクトの方針に持続性がない。多分来週までに11枚図面描いても、そのときにはまた方針がすっかり変わって、結局全部ゴミってことになるでしょう。そうやって、みんな、貴重な労働時間を使って将来の「紙くず」をせっせと作っているわけ。仕方ない、それが会社の方針だから。その繰り返し。そういうやり方で業績が上がっているなら文句はいわないですけど...。
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by furtwangen | 2008-10-30 07:27 | 黒い森の小さな町
2008年 10月 29日

社長とプチ上司の狭間で

昨日は「新しい時計を作る」っていうようなお題で会議がありました。
どういう時計を作ろうかねー、という話なのですが、社長は恐ろしいくらい前向きです。いま会社はいろいろありまして、なんでもかんでもやりたいことを無限にやれるわけではない。ですが、社長はよくまぁ、あんなにたくさん技術的なアイデアを持っていて、おまけに数年後には、こんなこともしたい、みたいな、まあ、どこまでも攻めの姿勢です。社長って、やっぱりすごいポジチブなもんだなぁ、と感心してしまうような、呆れてしまうような。

しかしプチ上司のクリスティアンは現実主義です。彼は実際に時計を作るときの実質最高司令官で、現実を知っています。(社長が現実を知らないという意味ではないですが。)製作時間がどのくらいかかるのか、外注の場合、どのくらい時間が必要なのか、それから試しの時間も必要で、そういう実際目の前に立ちはだかる問題を直視すると、到底社長のアイデアは受け入れられない。彼の話を聞いていると、「社長、お気を確かに!、我々にはそんな時間も、お金も、ノウハウもありませんよ、もっと現実的な話を!」って叫んでいるみたい。

で、僕はどっちかというと、表向きは50%50%。でも内心は7:3くらいで社長の夢に掛けたい。人生一度しかないし、時計職人として自分たちの時計を作れる機会なんて、めったにない。それになんたって、僕は社長じゃないから、失敗しても、もう今の状況じゃ失うものないから。社長が反対するならまだしも、その夢を実現しようって言うんだから、とことん付いていってやろうと思っているんですがね、内心は。
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by furtwangen | 2008-10-29 08:24 | 黒い森の小さな町
2008年 10月 27日

25時間の日

時差ぼけでなくて、夏時間から冬時間に移った関係で、今日は25時間ありました。

朝起きて、電波時計の針だけが変な時刻を指しているので、電波時計が壊れたかなと思うことと、

その後、自分の体に残っている夏時間時計が部屋にある電波時計と(いい意味で)合わなくて、いつもより1時間多いことを実感できちゃうこと。
「いやー、あんなに寝坊したのにまだ9時半かい!」
「そろそろ夕食かなぁ、なんてまだ5時かー」
みたいな。

もう今年で渡独6年目ですが、少しも体が学習しないらしく、いまでも夏冬時間の変わり目は新鮮で、不思議な感じで一日を送ります。(というか、ただの馬鹿ともいえます)

ということは、明日は朝7時に家を出ても、夏時間の8時ってことだから、もう明るいってことですね。これは悪くない。やっぱり「これから仕事!」っていう朝は明るくないと。満天の星空を見ながらの出勤では、気持ちが下向きになっちまいます。

話は変わりますが、
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これ(右)は、生ゴミにたかるハエさんのためのプールです。(左、生ゴミの紙袋)
生ゴミは多かれ少なかれ腐りますし、臭ったりします。僕はそういう、できれば自分から遠ざけたくなるような生ゴミを、わざと台所の目の前、いつでも見えるところに置いています。見えないところに置いて、いつの間にか、ものすごく腐っちまったりするのが嫌だからです。いつも生ゴミの腐り具合を監視していたい。

そういうわけで、先週も半ばにそうでしたが、気温が少し上がって暖かくなるとたちまち赤い目をしたハエさんが、どこからともなく、ぞくぞくと僕の生ゴミに集まってきます。そして多分集まってくるだけじゃなくて繁殖もなさっています。
だから、
「生ゴミにハエが来てしょうがないんだよ、そう赤い目をしたやつ」
って相談したら、クラウディオが教えてくれました。

「容器にお酢を張って置け」と。(ほー!)
「表面張力をなくすために、一滴Spuelmittel洗剤をたらすこと」と。(なるほど!)

で、この夏の経験から、普通のお酢よりもりんご酢の方がハエさんには受けがいいみたい。そして、明るいときよりも暗くなってからの方がいいみたい。一晩経てば、だいたい50匹くらいのハエさんが、念願のりんご酢のプールの底で深い眠りについておられます。

1027追記:招き猫さん
お久しぶりです。
僕もManeknekoさんからコメントいただくと、3年前、このブログを始めた頃のことを思い出します。おかげさまで、あの頃学んだ時計のことで、いまもどうにかやっています。好きなことを続けていられるというのは本当に幸せなことです。
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by furtwangen | 2008-10-27 07:40 | 黒い森の小さな町
2008年 10月 21日

利子の免税

今日は久しぶりに時計じゃない話です、ご安心ください(笑)

利子の免税の話です。

最近、ある金融機関に預金口座を作りました。そのときに知った免税のことを書きますが、なにせ苦手なドイツ語で、よくわからんお金の話を聞きましたので、間違っているかもしれませんが、その際はご指摘いただけると助かります。

口座にお金を貯金すると、毎年利子が付きます。その利子に税金がかかります。いくらお金のことがさっぱり分からん僕でも、そこまでは知っていました。

口座開設の際に行員に聞かれました。
「利息の免税額いくらにします?」
「い、いくらにします、って、あんた、あたしが決めていいんですか?」

こういう返事をしているようでは、この東洋人は何も分かっていない、と行員はすぐに気づいたのでしょう。いろいろ免税について話してくれました。

「まずですね、もしあんたが何にも申請しなかったら、あなたのお金に付く利息に対して30%の税金がかかります。」
(ほー、30%もねー。 って、そ、そんなに取るかねぇ)

「ところがだ、あんたは独身だね、そんなら、一年間にあんたが得る利子の総額が801オイロまでは、免税になるですよ。」
(は、はっぴゃく1オイロって、残高じゃなくて、利子ですよね。すごいね、801オイロの利息かー、夢みたいだなぁー)とニヤニヤ。

「もしあんたが、A銀行とB銀行とC銀行にそれぞれ口座を持っていて、それぞれに利息が付いたら、その利子の総額に対して免税額801オイロってことですよ」
(ほー、なるほど「総額」って、そういう意味。あんた説明がうまいねー)

「その免税総額801オイロは固定だけど、その中身をA,B,Cの銀行口座にどう振り分けるかはあんたが決めるんですよ」
(なーるほどねー、あんたよく分かってるねー。)

「で、免税額いくらにします?」
「えっ!」

ということで、そういうことらしいんです。

免税総額801オイロの割り振りはいつでも変えられる。
もし僕が大金持ちさんになって、利子の総額が803オイロになったら、803-801=2オイロが30%の課税対象。
既婚者はその額が倍の1602オイロになる。

日本には利子の免税措置ってありましたっけ?
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by furtwangen | 2008-10-21 06:48 | 黒い森の小さな町
2008年 10月 20日

巻きゼンマイの話3/3

巻きゼンマイの話1/3
巻きゼンマイの話2/3
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前回の示したこの状態が、香箱のなかで巻きゼンマイが一回転した状態であり、かつMalteserkreuzが組み込まれた香箱にとっては、ゼンマイの巻上げのスタート地点になります。☆のせいで、これ以上は解けないわけです。
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☆を組み込んでからさらに巻き上げます。矢印の方向が巻き上げの方向。この際、☆は巻き上げ作業を邪魔しません。
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さらに巻き上げています。巻上げを邪魔しないように、☆の腕が、○の外周に沿った格好をしています。
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順調に巻き上げています。
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まもなく2回転目、Malteserkreuzが組み込まれてから1回転目になります。
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○の鼻が☆に食い込んでも大丈夫。☆がうまく避けてくれています。
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まもなく3回転目、Malteserkreuzが組み込まれてから2回転目。
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まもなく4回転目、Malteserkreuzが組み込まれてから3回転目。
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まもなく5回転目、Malteserkreuzが組み込まれてから4回転目。
さあ、ここからまたちょっと詳しく見ていきます。
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だんだん○の鼻が☆に食い込んできました。僕としては巻きゼンマイを矢印の方向にさらに巻き上げたいところです。
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し、しかし!☆の形状の「1つ違う」腕のせいで、巻上げが邪魔されています(矢印のところ)。本当は香箱の中のゼンマイはまだ巻き上げられる長さや空間があるのに、この☆のせいで、もうこれ以上巻き上げられないと...ひぇ~!
したがってこの状態が、Malteserkreuzをもった香箱にとって、フルに巻き上げられたVollaufzugな状態、前々回のグラフでいうと、黒字の5のポジション、赤字の4の位置に相当します。

Ablauf解けるときの過程は、今まで示した巻き上げの過程を遡ればいいです。

こうやって、ゼンマイの持っている全巻き数から前々回のグラフで示した赤字の領域だけを抽出、限定させることが出来るということです。

実物と口頭で説明すれば、もっと簡単に説明できるのですが、文字で説明するとなるとなかなか難儀です(笑)

ここまで読んでくださった方、分かってくださいましたか?

ちなみにこのMalteserkreuzの欠点は、ゼンマイの使用範囲を限定するために、時計のLaufzeitが短くなってしまいます。それを補うために、Raederwerkのギヤ比Uebersetzungが大きくなり、したがって、必要なトルクが大きくなる。つまり強いゼンマイを使わないといけないということです。ゼンマイはできるだけ、薄く長いほうがいいです。
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by furtwangen | 2008-10-20 00:25 | 時計メカ
2008年 10月 19日

巻きゼンマイの話2/3

巻きゼンマイの話1/3

どう説明したら分かりやすいのか、いろいろ考えましたが、この機構の組み立て順序を示すのが一番わかりやすいかと思うに至りました。
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これはまだMalteserkreuzという機構を取り付ける前の香箱です。
香箱自体はもう組み上がっています。つまり中にはすでに巻きゼンマイが入っているということです。
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これから組み込まれる部品、3つ。
いまここで勝手に名前をつけます。左の部品を「○」、右のを「☆」と致しましょう。(右上のはただのネジ)
注目してほしいのは、
1.○には1つだけ出っ張った「鼻」があること、それと中心にある穴が「四角」であること。
2.右の☆には5つの放射状の「腕」がありますが、その外周上の形状が「1つだけ違う」ということ。(矢印のところ)
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まず、○を組み込みます。はめ込まれるゼンマイ軸の部分は四角い軸になっていますから、組み込まれた後は○と軸がいつも一緒に回ります。
そして大事なこと。この状態は前回のグラフの原点の位置に相当するということです。なぜなら、まだぜんぜん巻き上げていないからです。
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さあ、巻き上げ始めました。巻き上げの方向は矢印の方向です。つまりゼンマイは矢印とは反対の方向に解けたくてしょうがないでいます。
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さらに巻き上げています。もうすでに半周以上しました。だんだん巻き上げている(僕の)手がマジになってきています。なぜなら、僕は解けたいゼンマイの力に抗して力を与え続けないといけないからです。
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もう330度くらい回転させました。僕は、もうかなり真剣です。昨日のグラフを見ても分かるように、最初の一回転目までは、巻き上げれば巻き上げるほど、僕に抗する力が増してくるからです。
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やっと、一回転させました。かなり強くなっているゼンマイの復元力に負けないように僕はもう必死です。ここで力尽きると、今までの苦労が水の泡、香箱はゼンマイの復元力で、どっかにぶっ飛んでいくかもしれません。
ここで初めて☆を組み込みます。☆を組み込んで、その中心をネジでとめるまで、巻き上げる力を抜いてはいけません。いまがこの組み立て作業で一番大変なとき、ゼンマイに抗する大きな力を維持しながら、もう一方の手で、小さな☆を掴んで、正しい位置にはめ込まなければいけないからです。
☆の矢印で示した放射状の「腕」が、○の「鼻」のすぐ上に来るように、お互いをかみ合わさせます。これが正しい位置関係です。
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やっとこさ、ネジで☆の中心をとめました。
これで、☆がどっかに飛んでいってしまうこともありません。
☆はネジでとめられましたが、回転はなんの摩擦もなく楽にできる状態です。
ここまでくれば、もう巻き上げる力を維持する必要はありません。○はゼンマイの復元力で本当は時計方向に回りたくてしょうがないのですが、☆の「1つだけ違う」腕の形状がそれを邪魔して、ゼンマイの復元を阻止してます(矢印のところ)。こういう状態をドイツ語でsperrenといいます。
前回のグラフでいきますと、ちょうど黒字の1のポジション、赤字の0の位置に相当します。

(もう一回続きます。)
巻きゼンマイの話3/3
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by furtwangen | 2008-10-19 21:30 | 時計メカ
2008年 10月 19日

巻きゼンマイの話1/3

Malteserkreuzについての質問をいただきましたので、今日はその機構について書きます。

まず、なんでこんな機構が必要になるのか、その必要性について。
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このグラフは香箱にある巻きゼンマイの力について描いたもので、
横軸はゼンマイ軸の巻き(上げ)数
縦軸は巻き上げに必要なそのときの力

を模式的に示したものです。

横軸の黒い数字は、このMalteserkreuzという機構がない場合の、ゼンマイ軸の巻上げ数。
グラフ中の赤い数字は、この機構を搭載した香箱の巻上げ数です。

今回は、「巻き上げのとき」について書きます。「Ablauf解けるとき」でなく、という意味です。巻き上げの過程は、グラフ中では左下から右上に移る過程です。(完全に巻き上げられた時計の状態は右上にあります。ゼンマイが解ける過程は、したがって右上から左下に向かう過程です。)

このグラフをみますと、巻き上げの初め、最初の一回転くらいまでと、5回転目以降で、巻き上げるのに必要な力が一定でなく、右上がりのグラフになっています。

時計には、できるだけ一定の力を供給したほうがいいので、この力の変化の激しい、最初と最後の範囲は使わないで、その間の比較的力の安定した範囲だけを使いたいわけです。(つまり赤で示した0から4の範囲)

それを可能にするのが、このMalteserkreuzという機構です。
この機構を使うことで、力の安定した回転範囲だけをチョイス出来るということです。

では次回は、そのメヒャニスムス機構について。

巻きゼンマイの話2/3
巻きゼンマイの話3/3
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by furtwangen | 2008-10-19 01:17 | 時計メカ
2008年 10月 14日

ハイデルベルクで買った懐中時計7

今日は分解の最終段階です。もうほとんどすべてのBrücke、歯車類を取っ払いましたので、後はちまちま気づいた点を書きます。
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Aufzugwelle、右に写っているのがKroneリュウズ。Aufzugwelleの為に開けられたGrundplatineの穴が、長年の使用で随分大きくなっています。おかげでWelleはかなりガタガタ。このWelleは軸方向には動かない(引っ張られない)ので、新たに削りだして、少し太めの軸にしてもいいですね。

それからこのWelleのKrone側の先はVierkanteになっていて、それがKroneの四角い穴に差し込まれているのですが、そのWelleのVierkanteが少し捻れている。つまり、この時計、ゼンマイを巻き上げるのにかなりの力がいるらしい。買ってから何回か巻き上げて、「こりゃ、重いな」とは思っていましたが、それは古くて錆びたり、油切れのためではなく、そもそもそういう力の強い駆動ゼンマイを背負っているってことらしいです。

これはずっとずっと後の話、全部修理できて、完全に動くようになったら、Unruhの振幅をみて、もう少し弱いゼンマイに出来ないか考えてもいいかもしれないです。あんまり経験がないので安易なことは出来ませんが、ゼンマイが強すぎるのは体(Werk)によくないような気がします。
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Kupplungsrad。手前がBreguet-VerzahnungでKupplungstriebとかみ合う。そして円周上に切ってあるWolfsverzahnungがKronradに噛みあう。「この歯車にもおおかみの歯型が切ってあるんですよ」って言うのが、この古時計をみんなに見せたときに自慢したいこと(笑)。
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これはUnruhwelle、Ankerwelle、AnkerradwelleのGrundplatine側の軸受けに被せられたDecksteinのPlättchen。これを見て最初に思うことは、「分解してばらばらにしたら、どのPlaettchenがどの軸受けなのか分かんなくなりそう」ってこと。でもよーく見ると、そうならない様にポンチでそれぞれ点が打ってある。点無し、1点、2点と。もちろんGrundplatine側にも同じように点が打ってある。そしてもっとよく見てみると、あとで修理した職人さんがその点に気づかなかったらしく、新たに線を罫書いている。1線、2線、3線と。こういう無駄な罫書きは、正直言って残念ですなぁ。
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Plättchenをひっくり返したところ。左に3点、傷を付けて表面を起こしている。Axialspielの調整をした跡でしょう。
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Grundplatine側にも同じようなことがしてあります。
この時計はたぶん3,4度分解修理されているでしょう。そんで、だんだんガタガタになってきている感じです。人間と同じで、体はガタガタになってきたけど、味わい深い時計になってます(笑)
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一通り分解した後のGrundplatine、Werkseite。
Minutenradwelle上に押し込まれているViertelrohrがどうしても取れなかったので、いまは無理しないでおきます。そういうわけで、Minutenradが取り出せず、その歯車をぐらぐらのまま放っておくのもよくないので、Räderbrückeを再び被せています。
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GrundplatineのZifferblattseite。
この面上に、文字盤が来ます。この文字盤の固定も随分ガタガタ。

この時計、UnruhwelleのZapfenが折れていたり、Zugfederの力が「本当かい!」って言いたくなるほど重かったりで、かなり重症ですが、各Brueckeもかなりガタガタで、なかなかいい勉強になりそう。修理がいつになるか分かりませんが、何はともあれ、洗浄しないといけません。固形化した油や汚れを全部取らないと、正確な観察が出来ないです。
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by furtwangen | 2008-10-14 06:16 | 時計メカ
2008年 10月 12日

ハイデルベルクで買った懐中時計6

今日はFederhausです。

Federhausbrückeの上にある
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この...何というのでしょう、このPlättchenを取り除きますと
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Sperrradが取り外せます。
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取り外したSperrrad。おおかみの歯形。軸の穴はVierkanteschlüssel。鋼の板にこの四角い穴を開けるだけでも一大事です。きれいな歯車。
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これはSperrklinkenfeder。バリが残っていたり、仕上げが荒い。とめるネジ穴の位置もいまいち。(ネジ2つより、ネジを1つにしてPassstiftを使ったほうがいいように思います。ただ、この部品ももうかなり小さいですからね、口で偉そうなことを言うのは楽ですけど、実際の加工となると大変でしょう。)で、何を言いたいかというと、このFederはもしかしたらオリジナルの部品でなくて、後から修理の際に作り直したかもしれんなー、ってことです。

では今日もっともお見せしたい部分
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Federhausの裏側で、Stellungという機構です。Federhausの回転数を制限するための機構で、Federの過度の巻上げを物理的に止めること、それからFederの力というのは巻き上げ最初の頃はまだ力が小さく一定でないので、その間を過ぎて、トルクが一定になり始めたところから使えるようにする機構、とでもいいましょうか。
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MalteserkreuzというタイプのStellung。この機構のおかげで(せいで)このFederhausには解け切った状態でもVorspannungがかかっているということ。これ、分解・組み立てのときに気をつけないと、オリジナルな力が発生しないということですね。ちょっと怖いので、今はこれ以上分解しないでおきます。この右の星みたいな歯車の格好から、このFederhausは4回転分巻き上げられるということがわかります。

最後におまけ
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Werkの真ん中にあるMinutenradwelleの軸受け。裏から見たところ。一番大きな石で、このChatonだけが3つのネジでとめられています。VIP待遇のChaton。僕のいままでの観察だと、Werkの真ん中にChatonがある場合、ほとんどの時計は、それを「3つ」のネジでとめています。他の場所にあるChatonは2つのネジのときもあれば3つのネジのときもあります。しかし、真ん中のChatonはいつも(といってもいいくらい)ネジは3つ。

1013:H.Sutoさん
その名前の由来は知りませんでした。こういう名前の由来で思うのですが、ドイツ人の生徒は授業で初めてその言葉を聞いても、親や本などからその名前をすでに聞いているでしょうから、初めて聞いても何かしらのイメージを持てると思うのです。でも僕はほとんどすべての単語が初めて聞く言葉ですから、なんのイメージもわかない、忽然と現れた単語のように感る。その単語を忘れたらもう思う出だしようがないです。
例えば、旋盤のアクセサリーにTrichterscheibeというのがありますが、その言葉を最初に聞いたとき、僕には何のイメージもわかなかったです。なぜなら、Trichterなんて聞いたこともないからです。他のドイツ人の生徒さんなら、Trichterという言葉に何かしらのイメージがあるはずで、そうなると、その単語を覚えやすいし、忘れたときに思い出しやすいと思うのです。こういうのは案外ストレスになりました。
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by furtwangen | 2008-10-12 22:51 | 時計メカ