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シュバルツバルトな毎日

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2006年 07月 14日

ドイツの初等数学教育は崩壊している - その1

これは、ここの職訓で学ぶようになって初めてわかったことです。
本当に驚くほどひどいです。

まず、初めに断っておかなければいけないことは、これから書く内容は、大学進学を希望して猛勉している生徒さんや大学生には当てはまらないということです。そういうエリートクラスの方々は、逆に日本の大学生より数学ができるかもしれません。

さて本題、職業訓練学校の生徒さんの数学の出来なさについて。

職訓では、どこまでも実践的で、必要なことしか学びません。だから数学の授業でも、日本人が高校生のときまで学ぶような(高等な!)数学までやらなくていいのかもしれません。計算さえ出来れば、職人としては十分かもしれない。

僕はそのことを悟るのにほとんど一年を要しました。

学校が始まって最初の数学の時間にやったことは1mは1000mmというミリに関する変換の練習でした。このテーマのために2時間を割きました。受講しているのは17歳以上の生徒さんです。わかっていただけますか、この驚き!17歳の人間が2時間もかけて1mは1000mmです、を勉強しているんです。先進国のドイツで!僕は最初、この現実をどう受け止めていいか分かりませんでした。なにか、すごいトリック(ひっかけ問題)があるのではないか、はたまた 先生のドイツ語がちゃんと理解できていないのか、とか。
その後4,5時間かけて勉強したのが、分数の足し算。ドイツ人は本当に分数に弱いです。電卓を使っていいのでテーマは「通分」ということになります。通分するために分母を2倍したら、分子も2倍しなきゃいけない。そんなの当たり前すぎて、はっきり言って日本では、17,18歳の生徒のテーマじゃない。そんなことに、4時間もかけるとは、この人たちはいったい いままでどんな数学を勉強してきたのだろうと、本当に皮肉抜きで不思議です。

僕はそのころ(まだ悟れてなかったから)思ったのです。数学の世界には、これから、因数分解、方程式、行列、数列、微分、積分なんて分野がある。確率、統計なんてものもあるけど、果たしてこんなゆっくり勉強していて、どこまで勉強できるのだろうかと。

ちなみに数学の授業は週に1時間だけです。たった1時間だけ!これでは、今日勉強したことも一週間後には忘れてしまいます(どうせ、ドイツの職訓の生徒さんはおうちに帰って復習なんてしませんから)。僕は小学校のときでさえ週に4時間はあったと思う。17歳の高校生のときは5時間あった。つまり単純にいうと、日本の高校生が1年かけて学ぶ内容を学び取るのに、ここの生徒さんは5年もかかるということです。こんな状態が3年も続けば、日本人とドイツ人の数学能力の差は歴然で、そんなことは、火を見るよりも明らかです。
いくら職訓の生徒さんには高等な数学が必要ないとしても、程というものがあると思うのです。
もし、ドイツ人が自分達の数学能力の向上を望むなら、なにはさておき、学校での数学の絶対時間数を増やすこと、ほとんど毎日数学の雰囲気に接せられるようにすること、これが能力向上の最低条件と思います。

ドイツの初等数学教育は崩壊している -
その1/その2/その3/その4/その5/その6(最終回)

by furtwangen | 2006-07-14 08:36 | 時計学校@Furtwangen


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